感謝の昼食

高校の頃からの親友Nは唐突な男だ。
いつも、最寄り駅から
「今からいくからー」
とか、そういう感じで電話してくる。
本日も、そうであった。
「今、○○駅。家に居る？近くまで行ったら、また電話する。
ナビして。じゃあ、後で！」
まあ、こんな感じである。

うちについて、
「なあなあ、みーま。昼ごはん食べた？」
「いや、Nがうちで食べるかなと思って」
「なあなあ、みーまの家の前の、フランス料理屋入ったことある？」
「ええーっつ？！あんな家の目の前で、食べないよう！」
「やぱりなぁ？おれもそうだった！じゃあ、食べにいこうよ。なあ！」

私の格好は、フリースと穴のあいたズボン。
これはまずいだろと、ちっと着替える私。
スーツ着た明らかに、営業の合間のおっさんと（？）とフレンチを食すことに。
Nとは高校以来の２０年の友人であるが、フレンチは初めであった。

聞くと、タイムリミット１時間。
フレンチ１時間で食べられるかな。
店内ガラガラ。客は我々のみ。む、心配だ。この店大丈夫かいな。

二人で一番軽いコースを頼むことに。
パンをオリーブオイルにつけて食べたNの目から光線が
「みーま、このパンうまいぞ！くってみ？」
「え。ほんと～？あ、ほんとだ。全粒粉のパンだっつ！うまいねっつ？！」
フレンチを食べる雰囲気でない・・・ノリが高校生のままだった。。。

お豆のスープ。ひよこ豆、レンズ豆など、いろいろ入っていて、優しいお味。
二人でうまうま言って食べた。料理が好きなNは最近よく、豆のスープを作っているそうだ。

スズキのムニエル。下にリゾット。
美味しかったー！


デザート。

アイスクリームと、なんだっけ？
プリンじゃないんだけど、フルフルしててパンナコッタみたい。

Nは地震以来ずいぶん精神的に参っていた。早く元の明るいNに戻りますように。
日々思い出しては願っていた。
美味しそうにご飯を食べるNを見ていたらうれしくなった。
そして本人の口からも
「おれ、以前、食べるもの食べるもの、全部怖くて。本当はちゃんと栄養になっているのに、全然感謝の気持ちがなかったんだ。今は、何を食べても美味しい。」
ああそうか、よかった。本当によかった。
一時間、二人で感謝の気持ちでフレンチを食べきった。
良き友人をもって、本当によかった。

沖縄の姉が、以前美味しいものを送ってくれたときに
「N君と会う機会があったら、渡して」
と、いわれた古代米をわたしたら、喜んでおった。
聞けば、私の知らないところで、Nと姉ちゃんは、フェイスブックとを通して、仲良しになっていたようだ。

「しんどいのは、睡眠時間が２、３時間なだけ。ストレスはないから、大丈夫だ」
と、言いながら、元気にニコニコして、仕事に出かけるNを見送りつつ、心から感謝した。
そして、多くの人の心に地震の深い爪痕があるのを感じた。
Nは前向きで、とてもよい子で、立ち直りも早かったけど、そうでない方々もたくさんいらっしゃるに違いない。
地震に限らず、つらいこと、悲しいことがあった人が、少しでも多くの人が、心安らかになることを祈らずにいられない。

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